【開催報告】マンガ・推し活・ジェンダー――サブカルがひらくわたしたちの可能性@椙山女学園大学星が丘キャンパス

開催概要

日時:2026年8月4日(火)11:00~12:00
会場:椙山女学園大学星が丘キャンパス看護学部棟ブルーム(対面/オンライン)
主催:人間関係学部人間共生学科
参加者数:計80名(対面、オンライン合わせて)

イベントの趣旨

 わたしたちがふだん楽しんでいる、マンガや推し活といったサブカル(サブカルチャー)は、ジェンダーやセクシュアリティの影響を強く受けています。サブカルには、ジェンダーやセクシュアリティの固定観念に縛られない生き方をサポートしてくれる側面がある一方で、逆に新たな規範を作り出してしまう側面もあります。
 このイベントでは、BLマンガの専門家である西原麻里氏と、「推し活」を含む現代日本のポピュラー・カルチャーを専門とする中村香住氏に、サブカルの意義と問題点を、ジェンダーとセクシュアリティの視点から整理していただきました。その上で、サブカルをどのように現実の社会問題について考える場へとつなげていけるのかを、参加者とともに検討しました。

当日の内容

・オープニングとテーマ紹介
大木龍之介氏(椙山女学園大学人間関係学部人間共生学科教員)

・話題提供①
西原麻里氏(跡見学園女子大学教員)
 題目:BLマンガが描くもの――男性カップルと恋愛
 西原麻里氏には、BLマンガの特徴を踏まえた上で、男女の異性愛的な恋愛関係を中心に据えたマンガでは描き出せない関係性を、BLマンガがいかに表現しているのかについて、お話しいただきました。
 とりわけBLマンガにおいては、異性愛的な物語で期待されやすいジェンダー規範を裏切るような表現が見受けられること、そして、「ほかのだれでもない、あなただから好きなのだ」という、かならずしも社会的な期待や権力関係に則らない一対一の結びつきが重視されることが示されました。さらに、BLマンガが、現実の社会にあるジェンダーやセクシュアリティをめぐる課題――暮らし、同性婚をめぐる法制度、周囲との関係など――を捉え直す場としても機能していることを、お話しいただきました。
 一方で、BLマンガに見られる「無意識に差別的な表現」についても、指摘がなされました。このような、サブカルにおける「ジェンダーやセクシュアリティの規範への抵抗/その維持や強化」という両価性は、続く中村香住氏の話題提供へと引き継がれました。


・話題提供②
中村香住氏(慶應義塾大学大学院ほか教員) 
 題目:「推し活×ジェンダー」とは?
 中村香住氏からは、まず、「推し活」という用語が比較的新しいものであり、それを従来の「オタク」文化をパッケージ化/カジュアル化したものと捉え、反発する動きがあることが紹介されました。
 次いで、「推し活」には、BLマンガと同様に、ジェンダーやセクシュアリティの規範に抵抗する側面がある一方で、そうした規範を温存する可能性もあることが指摘されました。たとえば、アイドルや声優の「推し活」を取り巻く現状には、エイジズムだけでなく、「恋愛禁止」という抑圧的な側面も潜んでいることが示されました。
 さらに、メイドカフェにおけるメイドと客の関係性について、それを、従来の「他者を所有する」ような(異性愛的)関係性とは異なる、オルタナティヴな社会関係を編み出す場として捉える視点が紹介されました。しかし同時に、メイドの労働という側面に光を当てると、時給が発生する店舗での労働時間だけでなく、自分の生活時間を費やして客と「ポジティヴ」にコミュニケーションを取る「情動労働」の側面があること、そして「ポジティヴにふるまうこと」自体が、社会的に評価される「望ましい女性らしさ」の一要素になっていることが明らかにされました。

参加者から届いた声

 ■アンケートの自由記述より
  • 事例や重要文献を紹介いただいて、ジェンダーとポピュラー・カルチャーをめぐる複数の論点をおおまかながら知ることができたのがよかったと思います。
  • BL漫画と推し活という生活に身近な話題に含まれるジェンダー問題がとても関心深くて、あっという間に感じた。
  • 西原さんと中村さんのお話を聞き、私が普段好きな物を社会問題と繋げて考えることの重要さを知ることができた。 私自身幼い頃から誰かを応援することが好きで、基本的には男性同士の絆だったりに萌を感じたりしてオタ活をしてきた。だからこそ自分の経験が社会に影響されているということをしっかりと考えながらオタ活したり、作品を楽しんだりすることがより社会貢献に繋がったりするのではないのかと思った。
  • BL漫画について 丁度昨日BL漫画を読んだところだったので、すごく興味深くて良かった。自分が読んでいたBL漫画と今回講師の方が話されていた、BL漫画の特徴を比較すると、確かに、全て当てはまった。この講座に参加するまではBL漫画をジェンダー等を意識して読んだことはなかった。けど、これから読む際、ジェンダーやセクシュアリティについて考えながら読むとまた違う見方ができるかもしれないと思うと、もっと読みたくなった。
  • (「推し活」について)恋愛禁止の概念は二重構造があると聞いてとてもなるほどなと思った。恋愛禁止に同性愛等が含まれていないというのも、例えばグループ内で同性同士がてえてえ(尊い)というような切り抜きや公式からの扱いをされるというのが何より恋愛禁止の矛盾点だと話を聞いて感じたと同時に、尊いという形が私たちの望む物をメディアが商品化したものなんだと感じた。

今回のイベントから見えてきたこと

 BLマンガや「推し活」といったサブカルは、わたしたちがジェンダーやセクシュアリティをめぐる「ふつう」や社会問題について考えるための視座を提供してくれます。

 そのためには、サブカルが持つ「よい」側面だけでなく、そこに潜む問題点を丹念に紐解く、批判的=批評的な視点が必要となります。

 「サブカルがひらくわたしたちの可能性」とは、サブカルがわたしたちを個人的にエンパワーしてくれる可能性だけを意味するのではありません。それは、わたしたちがサブカルを通じて、社会問題という「政治的なこと」を語って(あるいは語り直して)いける可能性でもある――そのことが、本イベントを通じて見えてきました。

 世の中には、このような可能性を切りひらくサブカルの形態が、数多く存在しています。Sugiyamaジェンダーカフェではこれからも、さまざまな視点からジェンダー/セクシュアリティについて学ぶ場を、幅広く提供していきます。




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